研究概要 |
本研究では,ものの煮炊きに使用された土器類,火事を被った屋根瓦等,焼成後に再び加熱を被った遺物の再加熱の痕跡の検討法として,岩石磁気学の研究手法を確立することを目的としている.同手法により,考古学に非常に貢献できる加熱温度の情報の入手を目指し,また現場で非破壊で加熱状況を調べるための磁気探査以外の新たな調査法の開発も目的とした. 遺物や焼土が過去に被った熱履歴の調査として,加熱により獲得される熱残留磁化を用いる,段階熱消磁法,テリエ法と磁気ヒステリシス測定を手法としたが,そのための実験装置と解析方法の改良をまず行った.本年度は磁気異方性装置の利用も試みた. 実験材料として,北陸および関西地域から再加熱の可能性がある遺物を探し,それらの考古学的な情報を収集した.そして,テリエ法実験,熱消磁実験,磁気ヒステリシスおよび帯磁率測定を実施して再加熱を被った試料を抽出した 本年度は,歴史時代の火山噴火に伴い埋まった遺跡の調査も実施した.群馬県子持村では磁化特性による熱履歴測定法から遺跡が紀元6世紀の噴火で加熱を受けたことが認められた.また噴出した岩石の磁化から歴史時代の古文書にある噴火年代と,遺構の被加熱状況を検討できることが判明した. 昨年度,岐阜県焼岳火砕流の堆積地域で実施した人工焼土の実験領域は,1年経っても磁気異常は残っていた.さらに現場で非破壊で加熱状況を調べるための磁気探査以外の新たな調査法として,放射温度計による調査の有効性も確認した.
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