原石群の確立と産地分析結果:新たに調査したサヌカイト様原石産地は、北海道旭川市に位置する旭山原産地で、原石産地には多数の剥片が散布し、これら剥片と産出原石の組成は一致し、原石搬出のための一次加工跡の様相で、産地分析において重要な原産地であった。旭山産原石で作った旭山群が確立されたことにより北海道芦別市滝里、富良野市頭無川の両遺跡で旭山原石が使用されていることが明らかになり、知床地域で使用されているサヌカイト様石器には旭山産原石が使用されていないことが判明した。また、黒曜石では、浅間山大窪沢産原石群を確立し産地分析の原石群に追加した。新たに得られた黒曜石製石器の産地分析結果は旧石器時代から弥生時代で、北海道、青森県、新潟県、群馬県、長野県、神奈川県、岐阜県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県、島根県、愛媛県の各地からの57遺跡でサヌカイトと黒曜石製遺物合計1443個の産地分析を行った。今回、原石産地が判定された玉類遺物は、千歳市キウス遺跡の勾玉に糸魚川産ヒスイが、青森県下の3遺跡の48個の玉類の中で28個に糸魚川産、2個に日高産のヒスイが、島根県の3遺跡にも糸魚川産原石使用玉類が産地同定された。また、岐阜県西田遺跡では、飛騨産軟玉が使用されていることが、また北海道の美々4遺跡の約90個の玉類の殆どに糸魚川産ヒスイが使用されているが、数点に日高産軟玉が使用されていることが判明し、ヒスイ製玉類に糸魚川産以外のヒスイ使用例が確認されたことで考古学に新たに貴重な資料が提供できた。また碧玉製では、北海道江別市で佐渡産、余市町にも続縄文に佐渡産が、七世紀の管玉に島根県の花仙山産碧玉がそれぞれ使用されていることが明らかになった。
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