石器原材の産地分析から北海道白滝、十勝産黒曜石がロシア、サハリリンのルスツ、ソコルに、また神奈川県内遺跡に伝播していたことが判明し、石器原材の伝播に伴って文化とか生活情報が伝わると考えると、神奈川県の古代人がサハリンの情報を入手していたとも推測できる。信州霧ケ峰産黒曜石が約580Km離れた三内丸山遺跡に伝播していた。また、香川県金山産サヌカイトは静岡県・大分県の、二上山産サヌカイトでは静岡県、高知県の遺跡使用が確認された。ヒスイ製玉類の産地分析では88遺跡から出土した424個の産地分析を行っている。これらの多くには糸魚川産ヒスイが使用されていた。伝播の北限は北海道余市町の大川遺跡で、南限は宮崎県高岡町の学頭遺跡で使用が確認された。ヒスイ製玉類は糸魚川産との固定観念があるが、本研究で糸魚川産ヒスイ以外では、北海道日高産ヒスイが北海道の大川、美々4、青森市の朝日山遺跡で、また、飛騨産ヒスイが岐阜県丹生川村の西田遺跡で使用されていることが明らかになっている。また、原石産地不明であるが九州南部で多用されている玉の原材料と同じ成分組成の丸玉が岐阜県西田遺跡に伝播していることが産地分析で明らかになった。佐渡猿八産碧玉は佐渡島以北で主に使用され、兵庫県玉谷産碧玉の使用圏は100Km以内で、遺物で作った女代南B群は、使用圏からみて日本海を交易ルートとし遠距離に伝播したと推測され北海道余市町、佐賀県の遺跡から見つかった。また、宇木汲田遺跡出土の管玉で作った未定C群は、韓国などで作られ西北九州地方および瀬戸内海沿岸の遺跡のみに流入したと推測しても産地分析の結果と矛盾しない。島根県花仙山産碧玉は古墳時代に北海道、宮崎県の遺跡で使用されていた。
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