研究概要 |
1.試料前処理法の検討 紙・鉄器・土器資料といった歴史資料から,AMS-C14法による年代測定に必要なアモルファス・カーボンを得るための前処理装置を改良,検討した。試料に含まれる炭素を回収するためには高周波炉による効率の良い燃焼と,その結果生ずる二酸化炭素だけを回収することが課題となる。特に,鉄試料を燃焼する際に生ずる硫黄酸化物は二酸化炭素の還元効率を低下させる。そこで,より強力な高周波炉を有する軽元素分析・生成装置を導入した。本装置の本来の目的は試料中の炭素,および硫黄の濃度を酸化物として検出することにあるが,赤外吸収を利用するため内部に二酸化炭素を精製する仕組みを有している。本装置から排出される二酸化炭素を利用することで,効率の良いアモルファス・カーボンの回収が期待される。また,真空ラインを引くポンプの前段には油蒸気の逆流を防ぐトラップおよびアイソレーションバルブを設け,より清浄な真空の実現に努めた。 2.測定 平成8年度は,AMS-C14法の測定精度の向上のため,東京大学原子力総合センターのAMS装置の見直しが行われた。したがって測定された試料数は少数にとどまった。 3.関係諸機関との情報交換 本研究を推進する目的で,関係諸機関との情報交換を行った。東京大学総合研究博物館には試料の前処理法について情報を得た。名古屋大学年代測定資料研究センターには加速器による炭素14の測定について教唆を得た。奈良国立文化財研究所埋蔵文化財センターとは年輪年代法による歴史試料の年代測定について意見を交換した。
|