通常、破壊は不安定で亀裂の進行は予測不可能な現象と思われている。本研究では、サンプルに熱歪を加え、二つの熱浴のギャップ間を移動させることにより亀裂の進展速度と不安定性を制御可能な実検系を開発した。この系は、亀裂の進行速度が音速に比べて極めて遅い準静的破壊に分類される。この実験により、亀裂進展なし、直線亀裂、振動亀裂、カオス的不規則亀裂、分岐亀裂などの異なったパターンが、パラメータを変えることにより転移現象として観測されることを初めて示した。振動の開始は、非線形力学系のHopf分岐として理解されることを明らかにした。また、振動の波長が何によって決まるかを明らかにした。高速破壊に関しては、バネモデルを用いて、衝撃破壊の数値シミュレーションを行ない、破片サイズのべき乗分布則を再現した。また、有限サイズスケーリングの理論を展開し、物体の次元をd、衝撃波の進行波面の次元をDとすると、べき乗指数β=2-(D/d)という一般的関係が成立することを示した。
|