骨格筋では、高分子量タンパク質として分子量約300万のコネクチンおよび約75万のネブリンが知られているが、平滑筋においては骨格筋のネブリン以上の高分子量タンパク質は存在しないとされていた。しかし、ニワトリの大動脈平滑筋、砂のう平滑筋および心筋における高分子量タンパク質の存在をSDSゲル電気泳動により調べた結果、骨格筋のネブリンよりやや大きい、分子量90万程のバンドが存在することが確かめられた。この90万のバンドはコネクチンに対する各種のモノクローナル抗体、およびネブリンに対するポリクローナル抗体でイムノブロットをおこなっても全く反応がみられないことから、コネクチンやネブリンとは異なる新しいタンパク質である可能性が考えられた。そこで、この90万タンパク質の性質を調べるために、90万タンパク質に対して作製したポリクローナル抗体との反応性と、90万という分子量の指標としてウシ大動脈平滑筋およびニワトリ砂のう平滑筋より90万タンパク質の精製をおこなった。平滑筋から調製した筋原線維を1mM炭酸水素ナトリウム溶液で洗った後、0.1Mリン酸ナトリウム(pH6.6)で抽出したところ、フィラミンと共に90万タンパク質が抽出された。これをDEAEトヨパールカラム、ハイドロキシルアパタイトカラムにかけることで精製することができた。この溶出画分を電子顕微鏡を用いてロータリーシャドウイング法により観察した結果、骨格筋の弾性タンパク質コネクチンより短いものの、直径2〜3nm、長さ300nmほどのコネクチンと良く似た、非常に細長い分子像が観察された。
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