1.ラット大動脈初代培養平滑筋細胞をサポニン処理し、Ca-45を用いてATP依存性Ca貯蔵部からのCa流出を測定した。 2.スキンド細胞用緩衝液中の130mM KClをLiCl、Tris・HCl、NH4Cl、塩化コリン、Sucrose等で等張性に置換すると、Ca-45流出率は増加したが、RbCl、CsCl、NaClの場合は変化しなかった。Valinomycinはこの反応を抑制または修飾した。以上の結果から、貯蔵部膜上に電位感受性Ca遊離チャンネルが存在しそれが開口された可能性が示唆された。 3.KClを上記1価陽イオンまたはSucroseにて置換し、イノシトール三燐酸(IP3)によるCa遊離に対する効果をみた。無カルシウム緩衝液と300nMCa存在下の二つの条件について検討した。置換後の膜電位変化がIP3誘発Ca遊離を抑制する程度から、逆に膜電位変化の大きさ、さらに各1価陽イオンの相対的膜透過性順位を推定できた。 4. Valinomycin処理は300μMCa存在下のIP3によるCa遊離に影響しなかった。Valinomycin処理はKCl/塩化アンモニウム置換によるCa-45流出率の一過性上昇を抑制し、300μMCaの存在下のIP3によるCa遊離を増加させた。Sucroseや塩化コリンへの置換の場合は影響を受けなかった。 5.いくつかのカリウムチャンネルブロッカーは塩化アンモニウム置換によるCa遊離を抑制したが、IP3によるCa遊離隔には影響しなかった。KCl/塩化アンモニウム置換により誘発されるCa遊離が貯蔵部膜のK透過性の変化に影響されるものであり、IP3感受性Ca遊離チャンネルを介するものではないことが示唆された。 6.以上の結果から、ラット大動脈中膜由来初代培養平滑筋細胞の細胞内Ca貯蔵部には電位感受性Ca遊離機構が存在し、IP3感受性Ca遊離機構とは異なる可能性が示唆された。
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