血管平滑筋の収縮・弛緩調節におけるアドレノメデュリンの役割

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07833015
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 南野 直人 国立循環器病センター研究所, バイオサイエンス部, 室長 (50124839)
• 研究分担者: 松尾 壽之 国立循環器病センター研究所, 所長 (50028685)
• キーワード: アドレノメデュリン / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / リポポリサッカライド / ステロイドホルモン / 腫瘍壊死因子 / インターロイキン-L / 一酸化窒素

研究概要

アドレノメデュリン(AM)はヒト褐色細胞腫より単離された新しい血管弛緩性ペプチドで、強い降圧性を示す。最近、我々は血管内皮細胞や平滑筋細胞がアクティブにAMを産生すること、血管平滑筋細胞にはAM受容体が多数発現していることなどを示し、AMが血管壁におけるパラクライン、オートクライン因子として血管の収縮・弛緩調節に関与している可能性を示した。本研究ではラット培養血管平滑筋細胞、内皮細胞に種々の刺激物質を添加し、AM遺伝子発現、産生を調べることによりAMの産生調節機序を検討し、血管収縮・弛緩における役割の解明を目指した。
血管平滑筋細胞では、リポポリサッカライド(LPS)、腫瘍壊死因子、インターロイキン-1などに次ぎ、糖質ステロイドホルモンがアドレノメデュリン産生を強く促進することが分かった。またアンジオテンシン、カテコールアミン、フォルボールエステル、胎児血清等は弱いながらも産生を促進すること、逆にフォルスコリン、8Br-cAMP、スロンビン、VIPなどは産生を抑制することが分かった。これらの結果より特にcAMPを経るAM産生抑制系の存在が注目された。内皮細胞の産生調節は平滑筋細胞に類似するものの全体に変化量は少なく、スロンビンや胎児血清は逆に産生を促進した。またこれらの変動はいずれも遺伝子転写レベルで調節されていることが確認された。
さらに、LPSなどエンドトキシンショック誘導因子が最も強くAM産生を促進するため、ラットにLPSを投与すると3時間後に血中AMレベルは約20倍に上昇し、大動脈、肺、腸をはじめほぼ全組織でアドレノメデュリンmRNA量が大きく増加した。これらの結果より、アドレノメデュリンは血管壁で多量に産生され、隣接して存在する受容体に結合することにより効率的に血管を弛緩させ、特にエンドトキシンショック時には血圧低下誘導因子としてかなりの寄与をしていると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] N. Minamino,et al.: "Adrenocortical steroids, thyroid hormones and retinoic acid augment the production of adrenomedullin in VSMCs." Biochem. Biophys. Res. Commun.211. 686-693 (1995)
• [文献書誌] M. Nakazato,et al.: "Isolation and sequence determination of precursors of neutrophil peptides from bone marrow, plasma and peripheral neutrophil." Biochem. Biophys. Res. Commun.211. 1053-1062 (1995)
• [文献書誌] S. Sugo,et al.: "Effects of vasoactive substances and cAMP related compounds on adrenomedullin production in cultured VSMCc." FEBS Lett.369. 311-314 (1995)
• [文献書誌] H. Shoji,et al.: "Er. dotoxin markedly elevates plasma concentration of adrenomedullin in rat." Biochem. Biophys. Res. Commun.215. 531-537 (1995)
• [文献書誌] 南野直人 他: "シグナル伝達実験法" 羊土社, 12 (1996)
• [文献書誌] 寒川賢治 他: "Mebio" 株式会社メジカルビュー社, 9 (1995)