本年度はまず現在の下水道システムのエネルギー消費を定量的に求めるために、日本全国の377市町村に下水道施設の運転に伴うエネルギー消費アンケート調査を行った。その結果、296市町村から回答が得られ、下水1m^3を処理するのに必要な電力量としては0.46kWh/m^3、下水1m^3を処理したときに発生する汚泥量として0.006m^3/m^3の値を得た。下水1m^3の保有熱量を求めると約1000kcal/m^3であり、未利用エネルギーなどを用いた汚泥の乾燥が可能であれば、60%以上の電力の自給が可能であることが試算された。また、電力消費量の約85%は処理場内消費であり、その半分はエアレーションであった。 次に、下水汚泥からエネルギー回収として、1.凍結・融解処理により得られる低含水率の汚泥の燃焼による熱回収、2.消化による得られるメタンガスの燃焼による熱回収、3.高温・高圧下での油化により分離された重油状物質の燃焼による熱回収の3方式について、エネルギーフローを分析し、取り出しうるエネルギーを算定した。ここでは、エネルギー消費比率ECRを用いて評価を行った。まず、1.の凍結・融解処理であるが、プロセス中の乾燥過程にヒートポンプを有効利用する事を考え、エネルギーの利用効率を格段に高めたが、処理に投入するエネルギーよりも回収されるエネルギーが小さく、ECRは1.8とエネルギー投入型となった。2.の消化であるが、発生したメタンガスによりコ・ジェネレーションを行い電力と熱を取り出す事を想定した結果、ECRは0.93とエネルギー回収型となった。しかし、その効果は小さいことがわかった。3.の油化はECRは0.55と投入したエネルギー量の約2倍のエネルギーが回収できることが判明した。このことから、実際の装置制作上の種々の問題が解決されれば、油化が最もエネルギー回収率の大きな処理方法であり、開発が有望であることを示した。
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