研究概要 |
本研究は転石潮間帯群集における捕食圧の影響を定量化することを目的とし,次の3調査を実施した. 1。転石地潮間帯及び潮下帯の群集構造解明のための定量調査を天草および水俣において実施した.潮間帯2潮位,潮下帯2潮位から6潮位の定量調査を実施し,2種の貝類を除いて潮間帯と潮下帯では優占種が入れ替わり,重複が少ないことが明らかになった.つまり,潮間帯群集と潮下帯群集は隣接しているものの,かなり独立性が高いといえる. 2。潮下帯生物による潮間帯への侵入について,定期的な潜水観察を実施したところ,ベントス捕食者(イトマキヒトデ、レイシ等の捕食性巻貝)はほとんどあがって来ないことがわかった.一方,魚類のベラ・クサフグ・カサゴは高い移動力を示し,潮間帯の餌に極めて敏感に反応することがわかった.但し,潮下帯にはガザミ・イシガニ等の大型カニ類・タコの存在が確認されており,個体数は少ないながら,これらの種類の捕食効率は高いので,次年度の課題として残されている. 3。満潮時に低潮線付近に刺し網を設置し、次の干潮時に回収、潮間帯に侵入した魚類を採集し,胃内容物を調査したところ,潮間帯の餌,特にヒライソガニを利用していることが明らかとなった.また,潮下帯で採集された魚類からも潮間帯生物が餌として高頻度で利用されていることから,魚類による潮間帯の利用は日常的であると考えられた. 以上の結果,通常ベントス群集を対象とした定量調査では採集できないものが,重要な捕食者となっていることが明らかとなった.
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