ハナヤサイサンゴの群体から放出されたプラヌラ幼生を集めてプラスチックシートに底着させ、様々な群体由来のポリプを得、異なる群体由来のポリプどうしの接触反応を観察した。その結果、癒合(5組合せ10ペア)、非癒合反応(3組合せ3ペア)、および境界部は連続しているものの共生藻の少ない白い帯域の生じる非適合癒合反応(24組合せ51ペア)の3種類の反応が見られた。非適合癒合を示すペアの一部はその後非癒合に移行した(15組合せ18ペア)。 癒合および非適合癒合を示すペアの境界部を電子顕微鏡で観察した結果、癒合ペアの境界部の組織はなめらかに連続し、他の部域の組織と変わりなかった。非適合癒合を示すペアの境界部には、肥厚した細胞塊が見られた。この細胞塊には、(1)大きな液胞を持つ細胞、(2)ファゴゾームと思われる小胞(電子密度の高い内容物を含む場合とほとんど空の場合がある)を含む細胞、(3)クロマチンが中央に凝縮した核やくびれのある核を含む細胞、(4)分解途中の共生藻が見られた。これらの観察結果は、非適合癒合の境界部でアポトーシスによる細胞死と貧食が起こっていることを示唆する。非適合癒合を示すペアでは、いったん癒合した組織がアポトーシスにより分解すると考えられるが、形態形成過程で起こる細胞死と似ており興味深い。非適合癒合ペアは最終的には、間に骨格の壁をつくって非癒合になり安定すると思われる。 接触部の細胞組成を調べる目的で、数種の細胞解離法を試みたが、高温処理とCa欠如海水処理を併用することにより最も効率的にサンゴの解離細胞を得られることが分かった。現在細胞のタイプの同定を試みている。様々な接触反応を示すペアの境界部の細胞組成を調べるとともに、生きた解離細胞を用いて、異群体由来あるいは異種のサンゴ由来の解離細胞を混ぜ合わせたときの反応を調べる予定である。
|