1.Pleurochrysisの円石欠損変異株と野性株とからcDNAを調製し、ディフェレンシャル・スクリーニングにより、野性株でのみ発現している石灰化に関連する遺伝子を探索した。現在までに、野性株でのみ発現している遺伝子の部分的cDNAクローン1個を得た。この遺伝子は野性株でのみ約2kbのmRNAとして発現していることが、ノザンハイブリダイゼーションにより明らかとなった。今後全長を含むクローンを単離することにより、石灰化関連遺伝子への手掛かりが得られる可能性が強いと考えられる。 2.石灰化に関与する遺伝子を円石欠損変異株に導入することを目的として、遺伝子導入系の開発を試みた。先ず、微細藻類のモデル系としてクラミドモナスを用い、エレクトロポレーションによる遺伝子導入系の改良を行った。浸透圧調整(TAP培地+40mMショ糖)を行い、プレーティング時にコーンスターチを加えることにより、従来のグラスビーズ法の100倍程度の効率で(8×10^4transformants/μgDNA)形質転換体を得ることができた。次に、円石藻の形質転換体選択用培地の検討を行ったところ、Pleurochrysisでは20μg/mlのzeocinでコロニー形成が完全に阻害されることが明らかとなったので、今後はzeocin耐性遺伝子であるble遺伝子を用いてPleurochrysisでのエレクトロポレーションの条件を検討する予定である。 3.既に決定しているPleurochrysis等のRuBisCO遺伝子の塩基配列をもとに、新たにCalcichrysisなど16種のハプト藻のrbcLをPCR法により増幅し、その塩基配列を決定した。既に決定している遺伝子と合わせて、23種のハプト藻について最節約法等により分子系統樹を作製した。その結果、円石藻は単系統であること、その単系統群はEmiliania、Gephyrocapsa、Helicosphaeraからなるクラスターと他の円石藻からなるクラスターに分かれること、円石をもたないIsochrysisは、Emiliania、Gephyrocapsaのクラスターに含まれることが示唆された。
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