研究概要 |
光加入者系や光インターコネクトなど新しい光ファイバ通信に対して,低電力,高効率,大量一括生産できる半導体レーザが要望されている.本研究ではこれらの要求を同時に満たす新しい構造として,モノリシック形成が可能な垂直多重反射鏡をもつ短共振器レーザの提案と試作を行った.この反射鏡は半導体と空気をペアとする多層膜と等価であり,高い屈折率差により少ないペア数でも95%以上の高反射率が得られ,これによって短共振器化,低しきい値発振が可能になる.具体的には,光ファイバ通信に用いられる波長1.55ミクロン帯のGaInAsP/InP圧縮歪量子井戸を発光材料と仮定したとき,共振器長を20ミクロン以下にまで短くすることで100マイクロアンペア程度の超低しきい値が可能になることが理論計算より明らかとなった.この値は,光インターコネクトなどで望まれている高速ゼロバイアス変調を実現する上で十分低い値である.次にこの共振器のモノリシック形成法として,電子ビーム描画法と反応性イオンビームエッチング法の併用を考え,それらの条件を最適化した.そして多重反射鏡の回折次数3次の設計となる半導体線幅0.3ミクロン、ピッチ1.4ミクロンが10を超える高いアスペクト比で実現された.試作したレーザ素子をパルス電流により評価したところ,共振器長100ミクロンのときストライプ幅で規格化したしきい値電流2.6mA/μmにて発振を確認した.理論値との比較より,反射鏡の実効反射率は約60%であった.この値は理論的な反射率よりやや低いが,これはエッチングによって形成された半導体側壁の荒れによる光散乱が主な原因と考えられる.今後,エッチング条件を改善することで,特性をいっそう改善することは可能と考えられる.
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