研究概要 |
近い将来の光加入者系光通信,光インターコネクトの半導体レーザには低電力,高効率,大量一括生産が要求され,本研究では半導体/空気垂直多重反射鏡をもつ短共振器レーザを提案し,この要求に応えるような素子の実現を目指してきた.本年度は,この反射鏡の理論解析に対して昨年度まで用いてきた近似法を改良し,光の広がりによる回析損失を精密評価した.その結果,昨年度まで採用してきた3次回折格子の設計から空気層のみを1次回折格子の設計に変更することで,反射鏡として95%程度の高い反射率が実現できること,逆に半導体と空気の両方を1次設計としても大した効果は無いことがわかった.また反射率に対して計算される最低しきい値電流は100μAと現在製品化されている素子の1/30程度にできることもわかった.ただし空気層1次設計はサブミクロンオーダーの極めて鋭利な半導体加工技術が必要になる.塩素系反応性イオンビームエッチング法を用いてこの加工を試したところ,ビームの加速電圧を上げることで2次設計までは可能になること,この方法では1次設計は困難なことがわかった.また昨年までは曖昧であったこの反射鏡の効果を明確にするため,反射鏡枚数の異なる素子で性能比較を行った.その結果,枚数が増えるごとに単純に性能は向上することが確認された.ただしエッチングによる反射鏡形成では,反射面に20nm程度の荒れが生じていることが電子顕微鏡トポグラフィ像より明らかになった.この荒れが大きな光散乱を生じさせ,反射鏡の性能向上を阻害している.今後,化学支援イオンビームエッチングなどエッチング面の平滑政に優れた方法を利用することで,本レーザの性能が大幅に向上し,レーザ自体の高性能化だけでなく,光検出器や変調記など様々な素子の簡易集積化にも役立つ技術になる者と期待する.
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