研究概要 |
下顎運動の診査(下顎運動の計測)は,顎機能異常の病因的検討や臨床診断において重要である.特に,下顎運動を3次元6自由度で計測し,目に見えない部分である顎関節部での動きを計測(推定)し,咀嚼運動の解析を行うことが必要であると考えられている.一方,口唇付近の皮膚の運動は咀嚼運動を明らかに反映しているが,その動態と咀嚼機能の関係は明らかにされてはいない.そこで本研究では,下顎運動解析のための非接触式のセンサを統合して利用し,下顎運動の測定と,口唇付近の皮膚の動態を総合的に観測し,これらの関連を明らかにし,診断へ応用するための解析システムの構築を目的としている. 本年度は咀嚼機能を非接触的に測定するための装置の開発に主眼をおいて研究を進めた. a.レンジセンサによる運動計測装置の開発 下顎皮膚表面を滑らかな3次元曲面で近似し,非接触レーザ式距離センサの測定値との差が最小となるようにこの面を追跡することで運動状態を最尤推定する方法を検討した.この方法では石膏のような固体のトラッキングは正確にできることが明らかになった.しかし,柔軟な生体表面は運動に伴い変形するため,生体の変形モデルの導入が必要であるという結論に達した. b.2眼TVカメラによる口唇付近の動態観測装置の開発 患者の口唇付近にマークした複数の評点を2台のカメラによって観測し,口唇付近の皮膚の運動状態の時系列データを実時間で解析するための装置を開発した.システムはCPUにTransputer T800とMEPチップを組み合わせたものを利用し,長時間の動態記録が行えるようにトラッキング点群付近の小領域の画像を保存するようにした.この画像をもとにオフラインでサブピクセルの位置推定法を利用して高精度の標点座標推定が可能であることを明らかにした.
|