本研究により嚥下障害のうちで本人が自覚せず誤って気管に嚥下ししまう不顕性誤嚥には、三つの因子があることが判明した。 第一は、脳血管障害のうちでも大脳基底核の脳血管障害において不顕性誤嚥が多くなり、嚥下反射も低下し、肺炎の罹患率も高くなることである。このため脳梗塞予防に脳循環改善薬や抗血小板薬が有効である。 第二にドーパミンの合成能が低下して不顕性誤嚥が生じることである。ドーパミン補充療法により嚥下反射が改善することを証明した。 第三に気管と咽頭中のサブスタンスPの不足により嚥下反射は低下する。カプサイシンの投与により嚥下反射の改善をみた。 以上より不顕性誤嚥予防の手掛りが見出されてきた。 老人性肺炎は、要介護老人200万人のうち直接死因として最大の疾患であるが、老人性肺炎は不顕性誤嚥により生じるが、不顕性誤嚥を予防することにより、くり返し生じる老人性肺炎を予防する治療の目安がついたと考えられる。
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