1.顎関節滑膜中に含まれる可能性のあるサイトカインを調べる目的で、顎関節滑液のサイトカイン活性をELISA法によって検索し、顎関節症患者の滑液中から、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、IFNγが検出された。一方、健常人の滑液中からは、これらサイトカインはいずれも検出されなかった。さらに顎関節症患者の臨床症状、とくに顎関節疼痛とこれらサイトカイン産生との関連が示唆された。これらの炎症性サイトカインは、滑膜組織あるいは滑膜に浸潤してきたリンパ球、末梢血中の血球細胞のいずれかの由来であり、今後、PCRで滑膜から直接これらサイトカインの遺伝子が検出されれば、顎関節内障の病態解明に大いに寄与すると考えられる。 2.さらに、顎関節患者滑液中から、Nitric Oxide (NO)が高レベルで検出され、顎関節内の炎症性変化との関連が示唆された。さらに、顎関節患者における、上述のサイトカイン産生とNO産生との関連が示唆された。 3.顎関節内障患者の関節鏡手術により、手術器械によりbiopsyを行い、滑膜組織の一部を採取する方法を確立した。しかしながら本方法では、小量の組織しか採取できないため、PCR法による滑液組織中のサイトカイン遺伝子の解析は困難である可能性が示唆された。 4.したがって、今後、サイトカイン遺伝子の検索のため、顎関節開放手術によって得られた手術標本より、顎関節滑膜中のサイトカイン遺伝子の検索を行っていく予定である。
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