研究概要 |
本年度の研究においては有歯顎の片側性顎関節症と健常者の相違を下顎頭形態について検索した。対象は当初の計画に更に症例を追加し、片側性顎関節症97名、対照として健常者85名とした。検索方法は両側下顎頭X線撮影像の患側および健側の形態変化を比較するもので、撮影は眼窩-下顎頭方向を主体とし、一部の症例には断層像を併用した。 下顎頭形態の変化の判定にはYale(1963)の分類を参考にして行ったが、下顎頭の形態がround, convex, concave, flatの順に変化が大きくなるものとした。また、左右差が同一分類形態の場合には、部分的な形態差によって「左右差あり」と「左右差なし」の判定をした。 結果:片側性顎関節症においては左右下顎頭の変化のない「左右差なし」は、28/97名28.9%、「左右差あり」は69/97名71.1%であった。このうち「左右差あり」の69名の内訳は、健側下顎頭に変化が大きいと判定されたものが52名75.4%、患側が大きいとしたものが17名24.6%であった。一方、対照の健常者では「左右差なし」が71名83.6%、「左右差あり」は、14名16.4%であった。 現在までに得られた結果に対する考察: 対照の健常人の下顎頭形態の変化、左右差は10歳代ではほとんど見られないが、20歳代以後に見られるようになる。これは、う蝕、欠損歯、補綴物や片側での咀嚼習慣により左右の顎関節に対する荷重の違いの影響であることが考えられた。片側性顎関節症患者に「左右差あり」の比率が多いことは、下顎頭への機能的負荷に左右差があったと思われること、また、その形態変化が健側で大きかったことは、それだけ機能的適応が健側で円滑に行われたこと、このような適応が遅れた側に顎関節症が発現しやすいこと等が示唆される結果であった。
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