1 口腔内式仮骨延長装置の開発 下顎骨に埋入したチタン製骨結合型人工歯根を固定源とした口腔内式仮骨延長装置を開発した。チタン製のアバットメントとステンレス製の拡大用スクリューを銀合金にて鋳接することで、従来の創外固定装置を基にした口腔外式仮骨延長装置に匹敵する強度と延長の確実性が得られた。本装置は口腔内に装着されるため、患者の日常生活に支障を与えることなく延長が可能となると考えられる。成犬の下顎骨において本装置を用いた仮骨延長実験を行い、良好な仮骨延長が得られることを確認した。本研究の成果はJournal of Oral Maxillofacial Surgery(1996年4号)に掲載予定である。 2 外科的に生じた下顎骨実質欠損に対する仮骨延長による再建 成犬の下顎骨に25mmの区域欠損を作成し、人工歯根を利用した口腔内式仮骨延長装置にて下顎骨を再建した。骨移植をすることなく固有の下顎骨のみで欠損部は再建され、延長中および延長後も合併症は認めなかった。本実験の成果は、1996年9月の欧州顎顔面外科学会および11月の日本口腔外科学会総会にて発表予定である。 3 下後骨の仮骨延長部のX線学的・病理組織学的検索 成犬の下顎骨を用いた人工歯根を応用した仮骨延長における、骨形成についてい検討した。一般に下顎骨の骨形成は膜性骨化であることが知られているが、仮骨延長時には一部で軟骨骨化もおこることを明らかにした。索引荷重のかかった人工歯根と骨との界面の組織学的検索とともに、この研究成果は、International Journal of Oral Maxillofacial Implant(1996年2号)に掲載予定である。仮骨延長の固定源としてチタン製人工歯根を用い、その骨との界面を定量的に観察・分析した報告は世界で最初である。
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