研究概要 |
咀嚼運動はアンテリオルガイダンスの影響を大きく受けているが,両者の関係について実験的検討を行った報告は少ない.そこで本研究はアンテリオルガイダンスにおいて重要な位置を占める側方ガイドを実験的に変化させたときの咀嚼運動への影響について検討することを目的とした. 顎関節に自覚的,他覚的異常を認めず,咬頭嵌合位で犬歯部に緊密な咬合接触のない健常者3名と顎機能障害者1名の計4名の被験者で実験を行った.側方ガイドを変化させるために咬頭嵌合位を変化させず,側方滑走運動を犬歯部で誘導する修復物(以下ガイドとする)を白金加金にて製作した.ガイドは上顎近心咬合小面と下顎遠心咬合小面が接触するM型と,上顎遠心咬合小面と下顎近心咬合小面が接触するD型の2種類とし,そのガイドを用いて円滑に顎運動ができるように口腔内で調整を行った.実験においてはガイドを付与前と健常者では2種類のガイドを,顎機能障害者はM型のガイドを付与したときのガム咀嚼および空口時咀嚼様運動を行った.各被験運動をMM-J1(松風社製)を用いて測定し,ミニコンピュータ(DEC社製;VAX Station 4000)およびグラフィックターミナル(Evans & Sutherland社製;PS390)にて解析した.その結果,犬歯部に側方ガイドを付与することにより切歯点における咀嚼運動軌跡の範囲はガイド付与前に比べM型,D型ともに収束する傾向にあり,その度合いはM型の方が大きかった.空口時咀嚼様運動の水平面における運動論的顆頭点の運動軌跡は,D型において後外方に広がるものが認められた.側方ガイドによる影響はガム咀嚼時より空口時咀嚼運動のほうが著明であった.ガイドの違いにより咀嚼運動に変化が認められたが,その影響はガム咀嚼時より空口時咀嚼運動のほうが大きかった.
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