交感神経系が関節の炎症へ関与していることが示唆されてことをふまえて、われわれは、ラット顎関節における交感神経の分布を研究対象とした。神経の機能的な役割を知るために、交感神経に含まれているニューロペプチドY (NPY)陽性神経、交感神経のマーカーとしてノルアドレナリン合成の律速酵素であるチロシンハイドロキシラーゼ(TH)陽性神経の分布を酵素抗体法(ABC法)および間接蛍光抗体法により染色し、光学顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。共焦点レーザー顕微鏡観察によりNPYおよびTH陽性神経は血管と密接に関係し、特に小動脈を取りまくように網目状に分布していることが明瞭に示された。また一部静脈壁にも認められた。加えて滑膜表層細胞層に進入しているものも少ないながら観察された。さらに、これらNPY陽性神経はTH陽性神経とほぼ同様の分布を示したこと、上頸神経節切除後に両陽性神経とも消失したことから、交感神経由来と考えられる。 以上より、顎関節滑膜には交感神経が関節腔に面した滑膜表層から表層下層にまで比較的密に分布していることが明らかとなった。このことは、血管の拡張収縮、透過性といった血流調節やそれらに伴う滑液の調節などにこれらの神経から放出された物質が影響を与えていることが示唆される。以上のことは第8回顎関節学会にて発表し、また現在英語論文投稿準備中である。免疫電顕によるNPYおよびTH陽性神経の微細形態の観察はその途中であるが血管と関連した終末が認められており、さらに滑膜層における微細形態に注目して行っていく予定である。
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