研究概要 |
日本人若年層の視力低下は著しく,平成9年度学校保健統計調査速報(文部省)でも,裸眼視力1.0未満者の割合が小学校(26.3%),高等学校(63.2%)で過去最高になったこと,0.3%未満者の割合が年齢が進むにつれて上昇し,小学校(6.0%),中学校(21.7%)で過去最高になったことが報告されている. これまでの研究から,現在では視力の平均値がピークに達するのが5〜6歳と考えられることから,幼稚園の年中男児25名,女児18名,年長男児41名,女児26名,合計110名のオートレフラクトメーターによる眼屈折力の測定と,デンタルプレスケールによる咬合力の測定を行った.またこれら対象者に対して日常の食生活などについて,質問紙法による調査を行い,父母に記入を求めた. 眼屈折力は両眼の各3回の測定による代表値を用いた.デンタルプレスケールによる咬合力の測定は,全力で噛ませた後,オクルーザーによって咬合力(N),咬合面積(nun2),咬合圧力(MPa)を読み取り,解析を行った. 眼屈折力の中央値は0.00D〜0.25D,再頻値は0.00D〜0.25D,最小値は-0.50D〜-1.00D,最大値は0.75D〜1.50Dであった.男女間,年中・年長間で差は認められなかった. デンタルプレスケールによる測定結果の平均値も男女間・年中・年長間で有意差は認められず,咬合力は140N前後,咬合面積は21mm2前後,平均圧力は7.0MPa前後であった. 咬合力は,咬合面積との相関が正でp<0.01であり,平均圧力との相関が負でp<0.01となり,硬い食物の摂取によって咬耗が大きい場合に,大きくなることから,日常の食習慣が咬合力に影響していることが示唆された. 眼屈折力と咬合の各要素との間に,有意の相関は認められなかったが,眼屈折力の測定から,その発達に停滞が見られることが示された.
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