研究概要 |
これまでの研究から,視力低下が10年で1年程度の割合で,次第に低年齢化し,視力の平均値の最大値が5〜6歳まで低下していることが明らかになった.また視力の低下が,顔面の筋力の低下との関係が示唆されているので,それらの関連を検討するために,幼稚園児の視力と咬合力の測定を行なうとともに,アンケートによって食生活についての回答を求めた. 視力(眼屈折力)の測定にはオート・レフラクトメータを用い,両眼そらぞれの3回の測定値の代表値を用いた.咬合力はデンタル・プレスケールを全力で咬ませた後,デンタル・オクル-ザにかけて咬合力,咬合面積,咬合圧,左右のバランスなどを検討した. 幼稚園児の多くは乳歯の保有者であるが,5〜6歳の永久歯に変わりはじめる時期にあっても,ほとんど咬耗の見られないケースも多く,日常の食生活が軟食物を中心に営まれており,5歳児の咬合力も480Nから6Nまで幅広く分布していた.このことからある程度硬い食物の摂取による,年齢に応じた咬耗の重要性が示唆される.また対象者の年齢差が最大2年に近いにも関わらず,年長児と年中児の間で,視力や咬合力の分布に差が認められなかった.軟らかい食品の代表であった豆腐を「普通」と評価するものが少なくなかったことなど,幼稚園入園以前の食生活に大きな問題があるものと考えられる.今後,乳幼児の日常生活の中で,視力と咬合力の低下を予防する方策を考えることが必要であろう.
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