本研究では、乳幼児の咀嚼器官の発育を形態的側面、機能的側面、摂食行動的側面から多面的に検討し、数量化が可能な尺度を開発することを目的としている。平成7年度は、横断的研究と、横断的研究を行いデータの収集と各指標群の特性の解析を行った。1.横断的研究:0〜6歳時243名を対象に以下のことを実施した。(1)形態的側面:咬合状態の観察と形態計測を行った。(2)機能的側面:摂食時筋活動を筋電図に記録、咀嚼能率、咬合力の測定を行った。(3)摂食行動的側面:質問紙による摂取可能食品、摂食行動の聞き取りと摂食行動の観察を合わせて行った。2.経時的研究の開始:0〜3歳児120名を対象とし、上記各指標群のデータの蓄積を開始した。すでに3回の追跡調査が終了している。これらの資料をもとに各側面の指標群についての年齢的分散を明らかにした。いずれの指標においても平均的には発達による変化と考えられる方向性はみられるが、非常に大きな個人差があることが明らかとなった。特に摂取可能食品においては繊維性食品を中心に、年齢の幅が大きく、このことは咀嚼器官の発育と関係があることが示唆された。摂取可能食品数は2歳ごろまでは、増加してゆくが、それ以後増加はゆるやかとなり、3歳を過ぎると著しい変化はみられなくなる。このことから、2歳前後までが咀嚼器官の発育を考える上で大切な時期であることが示唆された。現在、各指標群の相互の関係について検討を行っている。
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