本研究では、乳幼児の咀嚼器官の発育を形態的側面、機能的側面、摂食行動的側面から多面的に検討し、その数量化が可能な尺度を開発することを目的としている。平成7年度は、横断的研究と、縦断的研究を行いデータの収集と各指標群の特性の解析を行った。平成8年度は、平成7年度に得られたデータをもとに各指標群の相互関係を検討し、乳幼児の咀嚼器官の発育評価尺度の原案について検討を行った。すなわち、横断的に行った形態的データ(咬合状態の観察と形態計測)、機能的データ(摂食時筋活動の筋電図記録、咀嚼能率、咬合力の測定)、摂食行動的データ(摂取可能食品、摂食行動の聞き取りおよび摂食行動の観察)の各指標群の相互関係を検討した。摂食時筋活動、咀嚼能率、咬合力などの各機能的データはほぼ一致した動きを示し、相関は高く一つの変数として考えることが可能だと考えられた。また機能的データと摂取可能な食品数の間にも有意な関連が認められた。しかし、これらの変数と、形態計測値との間には弱い相関しか見られず、経時的な変化も考慮に入れ検討することが必要であると考えられた。昨年度にひきつづき0〜3歳児120名を対象とし、上記各指標群のデータの蓄積を継続しており、発育の経時的変化を捉えるためにすでに5回の追跡調査が終了している。現在、各指標の経時的な変化の特徴を明らかにするとともに各指標群の相互関係について経時的に検討を行っている。
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