研究概要 |
平成8年度は,顎口腔系に異常を認めない成人男性4名を被験者として,閉口随意運動である咬みしめ時を対象としたRPの記録とその電位成分の確立に重点を置いた. その結果, 咬筋筋電図を全波整流積分し,その立ち上がりでトリガー信号を出し,咬みしめ動作(閉口運動)を行わせたところ,咬筋の活動に0.8〜1.5秒先行して陰性の電位変動(RP)が認められ,次第に増加して,筋放電の開始直前で最大となった. 2.RPはC3,C4,T3,T4のいずれにおいても認められた. 3.片側咬みしめ時におけるRPを頭皮上の記録部位別に観察すると,咬みしめ側の電位が高い傾向にあり,とくに側頭部であるT3,T4において高振幅な電位が得られた. 以上のことから,咬みしめ時におけるRP電位成分の確立がなされた.しかし咀嚼運動時においては、咀嚼運動自体を1ストロークずつ区切って行わせることから,咀嚼の進行に伴うリズム性が途切れ,かつ筋放電量が一定しないことが窺われた.さらにoff-line解析における平均加算に際しては符号化加算を行うこととしたものの,トリガー信号となる咀嚼筋活動の電位が異なることから,独自のコンピュータソフトウェアの開発が困難であった. 今後は,咀嚼ストロークの間隔を2秒程度に短縮した上で,加算回数を30回程度に低減し,コンピュータソフトウェアの改善を行って,それぞれの群における可及的多数例の集積から,咀嚼運動時におけるRPの記録とその電位成分の確立を図っていきたい.
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