研究概要 |
本研究は、歯周囲疾患、矯正刺激、外科手術などに伴う持続性疼痛が中枢神経系に与える影響を遺伝子c-fosを用いて明かにし、効果的な鎮痛方法を探る事を目的としている。平成7年度は下記のような研究実績を得た。 1ラット歯肉に微量のインターロイキン(IL-1β, 0.05μg)を注入し、歯周囲疾患に近い状態を実験的に作った動物の脳について、proto-onocogene, c-fos抗体を用いた免疫染色法により、三叉神経脊髄路核尾側亜核におけるc-Fos蛋白を検出したところ、陽性細胞の分布部位と数は、歯髄に電気刺激(0.2ms, 200μA, 0.5Hz, 10min)を加えた場合と同じであり、IL-1βが強い痛みとなり得る事が明らかになった。 2上記1による陽性細胞はNSAIDsの同時投与により抑制された。このことにより、IL-1βがprostaglan-dinを介して痛覚受容器を刺激し、尾側亜核の痛覚受容器細胞c-fosを発現させた事が示された。投与時間を繰下げるに従い、抑制効果が見られない時点を正確に特定できる事が判り、NSAIDsの投与時間、用量と鎮痛効果との関係を比較する上で、従来の鎮痛効果検定法に比してより正確に検定する方法である事が証明された。研究成果は、薬理と治療23巻(1995)に発表、かつ国際リウマチ学会で発表の予定(1996). 3実験的矯正刺激を加えた場合、ワイヤの荷重が大きいほど陽性細胞の数が多く、また早期に発現した。矯正刺激によるc-fosもNSAIDsにより抑制された事により、prostaglandinを介する痛みである事が証明された。
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