研究概要 |
平成7-8年度の研究実績は次の通り。 1実験的矯正刺激に伴う持続的疼痛が、中枢神経系に与える影響をproto-oncogene c-fosの三叉神経脊髄路核尾側亜核における発現を用いて確認した。矯正刺激として荷重の異なるワイヤをラット左右切歯間に挿入した場合、ワイヤの荷重が大きいほど、陽性細胞が早期に発現し、その数が増加した。矯正刺激と同時に非ステロイド性鎮痛剤を投与した場合、陽性細胞の発現が抑制された事により矯正刺激による痛みは発痛物質prostaglandinを介する事が明らかになった。 2歯周囲疾患による痛み、および外科手術後の炎症性疼痛にサイトカイン インターロイキンの関与する可能性について検証した。ラット歯肉に注入した微量のインターロイキンが三叉神経脊髄路核尾側亜核にc-Fos陽性細胞の発現を惹起し、これは歯髄電気刺激に相当する痛み刺激になりうる事、非ステロイド性鎮痛剤の早期投与により抑制できる事を立証し、抜髄、抜歯などの外科手術前の十分な鎮痛処置が望ましい事を歯科基礎医学会において発表し、国際リウマチ学会においてリウマチ疾患における関節滑液中インターロイキンが痛みを惹起する事を発表した。さらに、日本整形外科学会、日本外科学会などで講演した。 3痛み刺激に伴う中枢神経細胞のc-fos発現に関与するCaイオン流入には、glutamate receptorの内、NMDA,ampa/kainate,metabotropic receptorのいずれが関与するかを、歯髄刺激による三叉神経尾側亜核ニューロンのc-fos発現を指標として各receptorのagonists,antagonistsを用いて検定した。その結果、NMDA receptorの活性を介するCaイオン流入が最も関与する事を日本生理学会において発表した。
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