個体の生長過程におけるjuxtaoral organの形態的および機能的発達を検索し、以下の成績を得た。 1.juxtaoral organの形態的発達 胎生15日〜生後21日齢および10週齢のWistar系ラットを麻酔し、咬筋前縁表面よりjuxtaoral organを採取して、メチレンブルー生体染色およびH-E染色による光顕的観察、および電顕的観察を行った。その結果、juxtaoral organの軸構造は胎生16日齢の頬部で初めて認められ、嚢の原形は胎生18日齢で確認された。内嚢は生後1〜3日で、外嚢は生後10〜14日で完成し、嚢腔は生後21日でほぼ成熟期のものと同様になった。軸構造周囲の神経終末は出生直後から生後5日にかけて著しく増加した。 2.juxtaoral organの機能的発達 電気生理学的検索には生後12〜21日齢および10週齢の個体を用いた。麻酔下に摘出したjuxtaoral organにランプ波状伸張刺激を付加し、単一感覚単位からの求心性放電をair-gap法により導出した。生後10週齢のjuxtaoral organは、初期長から6〜11%の伸張で遅順応性の応答を開始し、20〜24%伸張時における147〜272i/sの最大応答頻度に達するまで、伸張度と応答頻度との間には正の相関関係がみられた。一方、生後12〜14日齢の受容器の閾値は初期長の15〜24%と高く、最大応答頻度は31〜45%伸張時に23〜44i/sであり、持続性応答は刺激開始から0.7〜2.1秒で消失した。生後21日齢の受容器の閾値および最大応答頻度は、成熟個体と生後12〜14日齢のものの中間値を示し、受容器の感受性は未だに低いことが明らかになった。
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