生後10〜21日齢および10週齢のウイスター系ラットを用い、個体の生長過程におけるjuxtaoral organの閾値および静的感度の変化を検索するとともに、これらの機能的発達に関連する形態的変化を調べた。 麻酔下に摘出したjuxtaoral organにランプ波状伸張刺激を付加し、単一感覚単位からの求心性放電をairgap法により導出したところ、生後10〜12日齢のjuxtaoral organには2秒以上の持続性応答を示すものは見られなかった。持続性応答は生後2週から出現し、その発現のための閾値は生後10日から3週にかけて急激に低下し、生後5週でほぼ成熟個体のものと同様になった。一方、静的感度は生後2〜4週で急上昇し、その後著しい変化はみられなかった。 形態的検索によると、持続的応答発現の閾値が低下する時期は、軸構造周囲のコラーゲン線維や弾性線維が発達する時期と一致した。一方、静的感度が上昇する生後2〜4週には内嚢と外嚢が分化し、両嚢の間隙に広い嚢腔が発達した。また同時期に、軸構造周囲のaxon terminalが膨大し、内包するmitochondriaやneurofilamentsの密度が増した。しかし、感覚単位の支配領野の大きさには著しい変化はみられなかった。 免疫組織化学検索から、生後2週以降のjuxtaoral organの嚢腔にはヒアルロン酸が存在し、その量は生長とともに増加することが明らかになった。外嚢を切除し、嚢腔のヒアルロン酸を酵素で除去すると、juxtaoral organの静的応答が消失した。Locke液で洗浄後、外液を6mM-KClを含むLocke液に置換すると静的応答が出現した。これらのことから、ヒアルロン酸によるaxon terminalの周囲のイオン組成の変化が、juxtaoral organの静的応答の成熟に寄与する一要因であることが推察された。
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