研究概要 |
これまでの研究成果から,歯根膜組織由来の培養細胞は形態学的には線維芽細胞であるが,骨芽細胞様の性質を有することが明らかにされている.また,歯根膜組織を構成する細胞が,autocrineあるいはparacrine的に増殖・分化を調節する因子を産生,分泌しており,歯根膜の細胞自身,骨芽細胞,セメント芽細胞の増殖・分化,さらに破骨細胞や破歯細胞の分化を調節する可能性が示唆された.本研究において,我々はヒト乳歯および永久歯由来の培養細胞に周期的伸展力を加え,サイトカイン産生に対する効果について,骨の形成および吸収,さらに歯根吸収に関与すると考えられるTGF-β_1とM-CSFの産生に的を絞り検討した.その結果,HPLF-YとHPLFはTGF-β_1およびM-CSFを,組織中で生理活性を発現する濃度で培地中への産生しており,両細胞の間で,その産生量に有意な差が認められた。特に、HPLFのconditioned medium中に含まれるTGF-β_1のレベルはHPLF-Yの2〜3倍と高く、増殖期の初期において機械的外力の負荷により上昇した。一方,HPLF-Yのconditioned medium中におけるM-CSF量はHPLFの1.3〜1.8倍の値を示した。また,HPLF-YにおけるM-CSFの産生量は,増殖期において機械的外力の負荷により減少したが,HPLFにおいては逆に上昇を示した。以上のように,HPLF-YおよびHPLFのTFG-β_1とM-CSF産生に対する機械的外力のこうか両細胞の間でことんる結果を示した。これらの結果から歯根膜を構成する細胞が,骨の改造や,歯根吸収に関与する因子を産生,分泌しており,そのレベルは機械的外力に応答して変化することが示唆された。
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