研究概要 |
骨細胞は骨芽細胞から分化した結果突起の発達した細胞で、成熟した骨の細胞の大部分を占める。その特異な形態からメカノセンサーとして機械的外力及び力学的環境の変化を骨全体に伝播する役割が想定されたものの、これまで分化した骨細胞を分離後維持する培養条件がなかったため実験的解析は不可能であった。我々は培養条件の利点を活かして、生理的なレベルを越える強いストレスと弱いストレスとで、前者には主に骨芽細胞によるPGE_2の産生、増殖促進及び基質合成の抑制等の作用があり、後者には骨細胞(オステオサイト)によるほぼ逆の作用のあることを新生仔ラット頭蓋冠より得た細胞で示した(Endocrinology, vol. 137, 2028-2035)。我々がこれまでに得た結果は、強い外力が主に骨芽細胞の増殖と圧縮・拡張方向への細胞のオリエンテーションにより応力を減少させる方向で骨梁を形成するのに対して、生理的な弱い外力(1000-3000μstrain)は若い骨細胞の増殖を止めて基質合成を促進することにより応力を減少させる事を示唆している。即ち生理的レベル内の弱い外力と強い外力とで、関与する細胞及び応力減少のメカニズムガ異なる訳である。歯槽骨での本格的実験が遅れた為、まだ3種類の細胞しか得られていない。そのうち骨細胞様の形質(低アルカリフォスファターゼ、高オステオカルシン)を示す細胞は一種類しかなく、比較検討できない。早急にもう2〜3種類の骨細胞様細胞を調整し、RT-PCR法を用いた情報伝達系のタンパクの分析を行う予定である。強いストレスと弱いストレスとでは、ラット頭蓋冠由来の細胞と同様の違いがあると予測されるが、歯槽骨は比較的強い外力に曝される組織なので、“強いストレス"のレベルが異なる可能性がある。
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