研究概要 |
骨が力学的な刺激に対して応答し骨形成が促進されることは周知の事実であるが,細胞レベルでの刺激の伝達機構は明らかでない。我々は、骨折レベルの強い外力刺激と弱い外力刺激が骨形成系細胞に対して作用機作を異にするとこれまでに示唆されていることにヒントを得、骨芽細胞がより未分化な段階から成熟し、更に骨細胞へと変化する際にそれぞれ特異的な応答を示すものではないかと考え、比較検討した。その結果、生理的レベルとされる、4,000μ strain(0.4%)以下の弱い伸張刺激の受容体は骨芽細胞ではなくて幼若な骨細胞(オステオサイト;成熟骨芽細胞から更に分化して、より低レベルのアルカリフォスファターゼ及びより高レベルのオステオカルシンを発現。形態的には、細胞突起の伸展とネットワーク形成を特徴とする)に存在することが、新生仔ラット頭蓋冠より得られた細胞において明らかになった。幼若骨細胞の弱い伸張刺激に対する応答は増殖の抑制及び分化(石灰化)の促進として現れ、その情報伝達経路にはcAMPの上昇が含まれること、及び末端においてIGF-Iの発現が誘導されることも示された。一方ヒトの海綿骨の場合、骨片の分離の際に新生仔ラット頭蓋冠のようにはきれいに単離できないためか、骨細胞様の形質(低レベルのアルカリフォスファターゼ及び高レベルのオステオカルシン)を示す細胞が少なく、あまり数が得られなかった。しかし得られた骨細胞様の細胞に関しては、弱い伸張刺激に対して仔ラット頭蓋冠由来の細胞と同様のレスポンス、即ちオステオカルシンなどの発現が亢進することがRT-PCR法により明らかにされた。又、その発現の亢進及び低浸透圧刺激によるCa^<++>の流入がどちらもアミロライドで抑制されることから、ENaC様のチャンネルの関与が示唆された。
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