研究概要 |
初年度は関節頭・関節円板の位置並びに運動のコントロールに対する各咀嚼筋の機能的役割を検討するために、ウレタン麻酔を施したウサギを脳定位固定装置に頭部を固定して急性実験下で行なっている。まず第一段階として、ウサギ下顎(関節頭、関節円板)運動の3次元的記録法の確立に主眼を起き行っている。なぜなら、下顎運動制御機構の解析に関するこれまでの研究では、下顎運動にとって重要な関節頭の運動と、外側翼突筋の解析に関した研究は殆どなされておらず、ましてや、関節円板の運動に関しては、皆無に近いからである。下顎運動の計測には、切歯点と両側関節頭3点に取付けたLEDからの赤外線を、2組の半導体位置検出装置(浜松ホトニクス C1373-04)を用いて3次元的に計測する計画であるが、現在定量的解析にまでは至っていない。しかし、肉眼的観察ではウサギの関節頭と円板の運動について、ヒトとは異なる所見が得られつつある。全運動軸は、人間で報告されているように関節頭あたりに位置しておらず、かなり下顎骨骨体部付近に位置しているようである。したがって、関節頭の運動は、回転運動は殆ど無く、絶えず前後的移動運動が主体である。関節頭の側方方向への運動については、定量的解析の結果を待たなくてはならない。関節円板の運動は、皮膚並びに周囲組織,骨の一部を除去してビデオカメラにて録画し、画像情報をコンピューターに取り込み画像解析装置にて円板の運動を解析しているが、運動がかなり速いため、民生用ビデオカメラの時間分解能(30Hz)では、不十分である可能性が高くなってきた。今後の詳細は解析のためには、高速度ビデオカメラの導入が必要になるかもしれない。外側翼突筋(外側翼突筋上頭かどうかは今後確認が必要)の筋電図記録は、ファインワイヤー(φ100μm)電極使用しているが、下顎骨の運動に際しても安定した記録が行えている。活動時期は、閉口運動時であり、伸張反射応答があることが、判明しつつある。ただ、伸張反射を誘発する関節頭の運動方向が人間の場合と逆であるので、この解釈のためには、関節構造の違いを考慮して考察しなければならない。
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