研究概要 |
rhBMP-2とトレー型吸収性(PLLA)プレートによる骨誘導による顎再建を目的とする基礎実験を引き続き行ってきた. 1.rhBMP-2の担体:フィブリン糊はその接着性を利用すると臨床応用に適していると考えるが,フィブリン糊を担体とすると骨形成が遅延するという報告があり,これについて検討した. 担体中のrhBMPの量を変えて骨形成までの期間をラットで観察した.フィブリン糊,フィブリン糊+TCP,対照として吸収性止血剤(インテグラン【encircledR】,スポンゼル【encircledR】)を用い,Wister系ラット(雄,6週齢)の背部皮下組織に埋入し,骨形成の有無を観察した.その結果,40μ g/ml以下では,対照を含め,11週以内に骨形成は認められなかった. フィブリン糊の生体内での吸収期間は5日間と報告されており,rhBMPが急速に拡散する可能性があり,また,rhBMP-2とフィブリン糊を混和すると単位容積あたりのrhBMP-2量が減少する.フィブリン糊を担体として使用する場合は,吸収までの期間が長い他の担体と併用し,単位容積あたりのrhBMP-2量を考慮する必要があり,この期間内の骨誘導実験では少なくとも50μ g/ml以上のrhBMP-2が必要であると推測された. 2.吸収性プレートの経時的変化:ポリ-L-乳酸(poly-L-lactide,PLLA)トレイ型プレートは,rhBMPと担体を保持するのに適してしる.厚さ1mmのプレートは顎骨形態の賦与が容易で,下顎再建時の初期固定力を有している.犬の顎切除後の下顎再建に使用し,3カ月後の経時的変化を検討した.3点曲げ試験による曲げ強度は未使用プレートの約62%を示し,プレートの吸収は辺縁や中央部に散見され,走査型電顕の観察では表面粗さがめだち,分子量は軽度減少していた.新生骨が3カ月以内に形成されれば,PLLAプレートは顎再建,担体保持の要件を満たすと考える.
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