研究概要 |
指に外奇形をもつハンマーツ-(Hammer-toe,Hm)マウスをジャクソン研究所より新たに導入し、リーラーヘテロマウス(rl/+)とハンマーツ-ヘテロマウス(Hm/+)を交配して、ダブルヘテロミュータント(Hm/+,rl/+)を作成した。このダブルヘテロミュータントのペア-を交配して得るF1は、指が正常であるならばリーラーで(+/+,rl/rl)、指が奇形であるならばリーラーではない(Hm/?,+/?)ので、実験の効率が著しく改善した。こうして作成したリーラーマウスとハンマーツ-マウスのダブルヘテロミュータントを交配し、腟栓確認後12-19日に母マウスを開腹し胎児を得た。胎児をパラホルムアルデヒドにて潅流固定し、三叉神経運動根を剖出して、ここにカルボシアニン系蛍光色素Dilの微小な結晶をタングステン針を用いて置いた。2週から6箇月後、マイクロスライサ-を用いて脳の連続切片を作成し、標識三叉神経運動核および中脳路核ニューロンを蛍光顕微鏡にて観察した。標識された三叉神経運動核ニューロン(特に腹内側亜核あるいは副三叉神経核accessory trigeminal nucleus)は、リーラーマウスでは正常マウスに比較して、背腹方向に広く分布した。また中脳神経堤に由来する三叉神経中脳路核ニューロンは、リーラーでやはり吻尾方向に広く分布した。以上より、三叉神経運動核および三叉神経中脳路核ニューロンは、胎生期に既に異常位置を占めていることが判明した。以上よりリーラー遺伝子座は、三叉神経運動核(の少なくとも一部)のニューロンの細胞移動と、三叉神経中脳路核ニューロンの細胞移動に関与していることあ、明らかとなった。
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