本研究は、下等脊椎動物の松果体の役割を神経科学的側面から解明することと、その生体調節との関連を系統発生学的な観点から明らかにすることを目的としたものである。この目的を実現するために以下のような実験を行った。 平成7年度には、松果体にリズムの振動体があるかどうかを確定することを目標とし実験を行った。その結果、明暗の光条件下だけでなく、連続暗の条件下でも培養松果体からのメラトニン分泌リズムが測定され、器官培養した松果体のメラトニンリズムは、内因性のリズムであり、円口類の一種、カワヤツメの松果体には内在性の時計があることが証明された。平成8年度には、メラトニンリズムの温度特性と光に対するする応答性を求めた。温度の影響については興味ある結果が得られ、培養松果体からのメラトニン分泌リズムは温度依存性があり、20℃でみられるメラトニンリズムは10℃では止まってしまうことが明らかになった。これは、時計そのものが止まってしまう事ではなく、メラトニンを合成する経路のどこかに温度依存性の部分があり、そこが10℃になると止まってしまうものと考えられる。次に、培養松果体のメラトニン分泌リズムの光に対するする応答性をみる実験を、平成8〜9年度に行った。その結果、メラトニンの分泌リズムは、明暗周期の位相前進及び位相後退に同期して位相前進及び位相後退する結果が得られた。また、メラトニンの分泌リズムは、連続明の条件下ではその振幅が次第に減衰してしまうことが明らかになった。 本研究により上記のような点が明らかとなるとともに、今後の重要な課題として、光がどの様な作用によって分泌リズムを消失させあり、位相合わせを行うかという点、更に、下等脊椎動物の生体リズムの光に対する応答に松果体光受容細胞がどのように関与しているかを明らかにすることがの重要性がはっきりした。
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