研究概要 |
当該年度における主要な研究テーマは、(1)プロトン移動が起こらないバクテリオロドプシン変異体に対してその原因を解明すること、(2)時間分解赤外測定系を構築することにあった。 バクテリオロドプシンの変異体であるD85N,R82Q,D212N,Y57N等では、プロトン移動が起こらず、M中間体を生成しないことが知られている。このうち、D85N,R82Qではプロトンの受容体である解離したアスパラギン酸85が存在しないために、プロトン移動が起こらないと考えられる。一方、D212N,Y57Nでは興味深いことに、プロトン供与体であるプロトン化シッフ塩素と受容体である解離したアスパラギン酸85が存在するにも関わらず、プロトン移動は起こらない。赤外分光法によるD212NのL中間体の構造解析により、シッフ塩基からAsp85への分子内プロトン移動は、水分子を介して起こり、その過程においてAsp212が重要な役割を演じていることが明らかになった(Kandori et al., J. Am. Chem. Soc. 1995,117,2118)。 さらに本年度、既存のナノ秒レーザーを利用した時間分解赤外分光測定系を構築した。時間分解赤外分光の実現は今後の研究の発展を約束するものである。 目標とした研究テーマ以外にも、ロドプシンの赤外分光、バクテリオロドプシンやその変異体、ハロロドプシンの研究を推進し、研究発表論文の欄に掲載した種々の成果を挙げることができた。
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