突然変異検出するために用いたプラスミドpMY189は突然変異の標的遺伝子としてSupFおよびSV40複製点とT遺伝子を持ち、ヒト細胞と大腸菌で複製でき、パーキンエルマ-社の自動シーケンサーでdyeprimer法で塩基配列が正確・容易に決定できる。 まずpMY189を用いてDNA修復の無細胞系を確立した。この系では、種々の正常ヒト細胞の抽出物によって紫外線照射したpMY189に特異的に[^<32>P]-dATPの取込みが見られ、DNA修復を機構を欠損するA群色素性乾皮症細胞の抽出物ではその取込みが見られなかった。相補性群の異なる色素性乾皮症細胞の抽出物の混合によってその取込みが見られ、細胞と同様のDNA修復の相補が見られた。チャイニーズハムスター細胞のDNA修復正常株、修復変異株でもヒト細胞と同様の結果が得られ、無細胞系でDNA修復が行われていることが確認できた。この系に大腸菌で作らせたp53蛋白を加えて影響を調べたが、DNA修復の増強・抑制は見られなかった。 無細胞複製系ではSV40T抗原と正常ヒト細胞抽出物を用いて、pMY189にDNA複製による[^<32>P]-dATPの取込みが見られた。この系にはS期にある細胞の抽出物を使うことが重要であることがわかった。この系に紫外線照射したpMY189を加え、ヒト細胞抽出物で複製後、lacZ遺伝子にアンバー-変異を持つ大腸菌を形質転換し、X-galとIPTGを含む培地でSupF遺伝子の変異を検出した。しかしながら出現したコロニー数が少なく、この系はもう少し改良が必要である。 細胞を用いた実験系ではp53遺伝子が誘導発現できる細胞系を作成し、p53蛋白は紫外線およびX線誘発突然変異を抑制することを見いだした。
|