本研究は、核コードの転写因子を介して葉緑体コードのサブユニットタンパク質の発現量が制御されていることを、光応答D/C-3プロモーターを対象に解析する事を目的としており、本年度はプロモーター活性化の分子機構および光応答性の解析を行った。 光応答プロモーターの活性化機構 D/C-3プロモーターの活性に-35領域よりも上流配列が必要であることは既に分かっていたが、本年度の研究によって転写開始点の35から60-bp上流の領域に少なくとも2カ所の転写増強領域が存在することが分かった。また、転写開始点の5-bp以下下硫はD/C-3プロモーター活性に関係ないことも明らかにした。複数のシーケンス特異的DNA結合タンパク質がこのD/C-3プロモーター領域を認識しており、その一つは分子量約26-kDaのタンパク質であった。一方、これらの転写増強領域は転写の光応答には直接関係しておらず、光応答には、より転写開始点に近い配列が関わっていると思われ、光照射による葉緑体RNAポリメラーゼのモジュレーション、または異なったRNAポリメラーゼの出現が転写の光応答を引き起こしている可能性が強く示唆された。 光応答性の解析 D/C-3プロモーターは成熟葉緑体において明-暗シフトにリバーシブルに応答するがその活性化は、光強度に依存した比較的はやい現象であることが分かった。また、このプロモーターの活性化に合わせてpsbD、psbC遺伝子にコードされたD2、CP43タンパク質の合成速度が増大することから、このプロモーターの光活性化がこれらのタンパク質の光照射下での早いターンオーバー制御に直接関わっていることが明らかになった。
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