本年度は、研究計画1)大腸菌における変異の解析と5)5-メチルシトシンを含むジヌクレオチドの合成とその反応、について主に研究を行った。 1)大腸菌における変異の解析では、UVBがM13mp2ファージに対する変異誘起スペクトラムの解析を中心に研究した。M13mp2ファージにUVBを照射して、これを大腸菌に感染させ、約100変異株について、変異箇所の塩基配列変化を同定した。その結果、UVB照射では、ピリミジン、特にシトシンのトランジション変異が顕著に観察された。これは、従来我々が太陽光の研究で得ていたもの異なっている。そこで、太陽光の実験を再度行って、太陽光が主にグアニンに変異を起こすことを確認した。これらの事実から、M13mp2ファージの変異でみる限り、太陽光と太陽光中の変異誘起成分と考えられているUVBとは、その作用が異なっていることが示された。また、8-オキソグアニンなどの酸化的損傷を切り出す修復酵素遺伝子mutMを欠く大腸菌を宿主としたときも、通常の修復能を持つ野生株を宿主としたときも、変異誘導にほとんど差が見られなかったことから、ここでの変異には、8-オキソグアニンなどの酸化的損傷は関係していないと考えられる。 5)5-メチルシトシンを含むジヌクレオチドの合成とその反応では、5-メチルシトシン(mC)を含むジヌクレオチド、C-mC、対象となるC-Cの合成を行った。これに対し、基礎生物学研究所の大型スペクトログラフを用いて単色光照射を行い、現在その反応生成物(光二量体)や反応効率の解析を進めている。
|