本研究では、M13mp2ファージの変異スペクトラムと5-メチルシトシンを含むオリゴヌクレオトチドを用いた5-メチルシトシンの光損傷性の研究により、新たな視点から太陽光によるDNA損傷を解析しようとするものである。ファージの実験では、今年度は太陽光のスペクトル強度が毎正時に測定されている、札幌気象台と沖縄気象台においてM13mp2ファージに太陽光を照射し、変異スペクトラムを調べる実験を試みた。沖縄の実験では、変異スペクトラムの解析まで終了した。その結果、岡山で太陽光照射したデータとは異なり、グアニンの変異は多くなく、むしろジピリミジン部位の変異が多いという、興味深い結果が得られた。また、光照射したファージを4℃で保存すると著しい失活が観察された。これは太陽光照射したDNA上の損傷がさらにより毒性の強いものに変化して行く可能性を示唆している。ファージやDNAを太陽光または紫外線で照射した際には、酸化的損傷の指標とされている8-オキソグアニンが生成することも見いだし、その解析も進めている。 一方、5-メチルシトシン(5mC)の研究では、5mCをふくむジヌクレオチドCp5mCを合成し、そのUV反応性を検討した。その結果、ジヌクレオチドは主にふたつの生成物を与え、その一方はもう一方の前駆体らしい事がわかった。また、加熱処理で消失するピークも検出され、これは光水和物らしい。今後。これら生成物のできるスピードを種々の波長の光照射を行って測定し、DNA中の5mCの光損傷性の解析を進めたい。
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