まず、“非科学"の社会的な側面について考察するために、「占いブーム」「オカルトブーム」「世紀末」などと言われることがどにように年代を経て変遷してきているのかを、一般雑誌の記事変遷を手がかりに検討した。また、街中などにある占い屋では、どのような占いが実際に行われているのかについて、そこで研究者自身が占い屋で占ってもらうという経験をし、その内容の考察も行った。それらの結果、“非科学"に関する方法は質量ともに現在は充実してきていること、占い屋での占いがカウンセリング的な役割を果たしていることなどが明らかになった。 さらに、“非科学"に傾倒する個人的・認知的な要因について考えるために、いくつかのアプローチを試みた。小学生を対象にした質問紙調査では、小学校の中学年から高学年にかけて「占い」や「血液型」に関する話が浸透していっていることを示した。また学生を対象とした質問紙調査では、“非科学"への信念と“科学"への信用は独立であり得ることが示唆された。また、「占いが当たった」ということがどういう場合なのかを、実験室で実際にタロット占いを受けている被験者のプロトコルの分析によって検討し、占い屋での占いを経験した女子学生への詳細な面接調査も行った。 以上の調査によって、“非科学"への人々の傾倒について、社会心理学の立場からひとつの有益な知見を示すことができたと考える。なおその成果の詳細は、『いわゆる“非科学"への人々の傾倒に関する社会心理学的研究』(文部省科学研究費奨励研究A研究報告書)の中で詳述してある。
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