本研究は、社会教育職員の専門的力量形成のためのプログラムを具体的に策定する前提として、「自己形成史」分析法(タテ軸)及び学習(講座)関与モデル分析法(ヨコ軸)にもとづいた社会教育職員の実践過程に刊する実証的な研究をめざすものであった。 本研究に取り組んだ結果、以下の事項が明かとなった。(1)「自己形成史」分析法(タテ軸)を確立するための社会教育職員のヒヤリング調査から、地域差や自治体の規模をある程度反映しつつも、基本的には社会教育専門職員としての力量を形成するためにほぼ共通した職歴をもつ傾向があることが明かとなった。一般的には、地域の社会教育関係団体への「指導・助言」や団体に関連する講座を担当する職務(年齢が近くコミュニケーションがとりやすいという理由から、とりわけ青年団体)の経験<公民館主事的職務>をもとに、次第に地域社会教育計画にかかわる事業(講座)の連関や施設・職員配置などの幅の広い計画的職務の経験<社会教育主事的職務>を経て、旧来の社会教育行政の枠を越えた学校教育や一般行政領域(健康・福祉・労働・環境・産業など)との交流や関連を重視する職務<生涯学習的職務>へと、職員の専門性が広がっていく傾向が見られた。他方、(2)学習(講座)関与モデル分析法(ヨコ軸)を確立するための連携した「健康学習」事業の事例調査については、実質的な連携を実現しているケースがほとんどなく、公民館主事と他の専門職がそれぞれ個別に実施する講座への関与の仕方をモデル化する方法に切り替えたが、事例収集に時間がかかり分析途上にある。以上のことから、「自己形成史」分析法(タテ軸)の精緻化を大枠としつつ、学習(講座)関与モデル分析法(ヨコ軸)を個々の事例を補足するために使用するという考え方が適当ではないかという予測をもっている。本研究の一部は、平成8年度の専門学会で報告される予定である。
|