研究概要 |
カリックス[6]アレーンの1,4-位をm-キシレン誘導体で架橋した新規なbowl型化合物の合成法を確立し、X線結晶構造解析、NMR、分子力場計算などの手法を用いて、それらが従来のカリックス[6]アレーンにない構造的特性を有することを明らかにした。特に、これらの分子においては、カリックスアレーンを利用する際にしばしば問題となるコンホメーションの変化が架橋によりかなり規制されていることがわかった。この架橋カリックス[6]アレーン骨格を有するt-ブチルスルホキシドを合成し、その熱分解を行うことにより安定なスルフェン酸(RSOH)の合成に成功した。この熱分解は、固相、溶液中いずれにおいても可能であり、トルエン中では定量的に進行した。得られたスルフェン酸は、80℃、4時間の条件においても変化を示さないなど高い熱安定性を有しており、架橋カリックス[6]アレーン骨格が、その空孔内に導入された高反応性化学種の安定化のための反応場として効果的に機能することが示された。また、芳香族スルフェン酸としては初めて、X線結晶構造解析に成功した。同様の手法によりセレネン酸(RSeOH)の合成についても検討し、現在までにその前駆体としてこの骨格を有するn-ブチルセレニドを合成している。アリールベンジルエーテル骨格を有するbowl型二環性シクロファンの系については、チオールの酸化について検討した。0.5モル当量の臭素により酸化したところ、対応するジスルフィドは生成せず、回収されたチオール以外にスルフェニルブロミドが定量的に得られた。一方、この反応で臭素酸化の後0.5モル当量の1-ブタンチオールを作用させたところ対応するジスルフィドが得られた。これらの結果から、bowl型二環性骨格が可能基の他分子との反応性を維持しつつ、その自己縮合を効果的に抑制していることが示された。
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