1.室内実験による蚊の種間競争の解析 竹の切り株の水たまりを模したマイクロコズムを用いて、ヒトスジシマカとキンパラナガハシカの幼虫の種間競争の解析を行った。単一のコホートを用いた短期的な実験と複数のコホートによる長期的な実験とで優占種がそれぞれ前者と後者になることを明らかにした。すなわち、不安定な水たまりではヒトスジシマカが優占し、安定な水たまりではキンパラナガハシカが優占することが示唆された。この成果はEcological Researchに投稿中である。 2.野外調査による竹林内の蚊の幼虫の分布の解析 安定な水たまりと不安定な水たまりで、優占する種が異なるという1の実験からの予測を確かめるため、野外での分布の調査を行い、この予測に合致する傾向を検出した。すなわち、キンパラナガハシカは水深の深い水たまりに高密度に見られ、ヒトスジシカマは浅い水たまりにも多く見られた。他に、野外では乾燥ストレスが強烈で、特に冬季の乾燥が蚊の群集組成に強く影響を与えていることが示唆された。この結果は第48回日本衛生動物学会で発表する。 3.蚊の幼虫の生理特性の数理モデル化 ヒトスジシマカとキンパラナガハシカに見られる成長速度と飢餓耐性のトレードオフ関係を説明する数理モデルを作成した。活動代謝率が摂食活動と消化活動にフィードバックされるという仮定のもとでは、ある餌量を境に、代謝率が高い種と低い種の成長速度が逆転することを示した。すなわち、餌量が少なく場合は代謝率の低い種が優占、このような種は低い成長速度と高い飢餓耐性をもつ。餌量が多い場合には逆になる。この結果は第43回日本生態学会で発表する。
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