研究概要 |
我々は種々の日本型イネ品種より約14kbpのプラスミド様性質を持つ2本鎖RNAを発見した。この2本鎖RNAの全塩基配列を決定し13,716kbの巨大なオープンリーディングフレームがコードされていること、2本鎖RNAのコーディング(+)鎖には、5'末端より1,211塩基の位置にニックが存在していること等を明らかにした。 本研究では、ニックの生成機構を解析するために、ニックの部分を含むcDNAを鋳型に用いた試験管内RNA合成反応により、420塩基の人工2本鎖RNAを調整した。この2本鎖RNAに本来の位置で切断が起こると、150塩基と270塩基のRNAが生成する。その生成物をポリアクリルアミド電気泳動で検出する実験系を確立した。種々の実験条件を検討したが、特異的切断反応は検出できなかった。この結果は、人工2本鎖RNAがカバーする範囲よりもより広範囲のRNAの構造が切断反応に必要であることを示唆している。今後、より広範囲の配列を持つ人工RNAを用いた実験により、切断反応の詳細を解析したい。 次に、2本鎖RNAの複製反応とニック生成反応の関係を解析するために、試験管内2本鎖RNA複製反応系を確立した。2本鎖RNAを含むイネ種子由来の培養細胞より、分画遠心により粗酵素液を調整し、反応生成物をアガロースゲル電気泳動により解析した。その結果、約14kbの生成物の他に、約1.2kbの生成物が検出された。この結果は、2本鎖RNAの複製反応において、全長(14kb)の2本鎖RNAが生成されると直ぐに、ニックが生成する事を示している。さらに、2本鎖RNAの複製反応において、RNA合成反応と、その切断反応(ニックの生成)が密接に関連していることや、ニックの生成が2本鎖RNAのコピー数制御に関わっている可能性を示唆している。
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