シャーレに満たした界面活性剤(トリメチルステアリルアンモニウムクロリド)水溶液中に油滴(ニトロベンゼン)を注入したとき、油滴は、シャーレに沿った自発的な回転運動を行う。その運動をCCDカメラによって録画し、画像処理を用いて解析した。はじめに、角速度の温度依存性を調べた。温度と角速度のアレニウスプロットをとったところ、約20℃を境にして傾きが急激に増大した。また、40〜20℃においても、温度の減少に比例してアレニウスプロットの傾きが大きくなった。次に、シャーレの半円のみを水酸化ナトリウムで処理した時の、油滴の運動を調べた。油滴が処理領域に入るとき、角速度は加速され、処理領域から未処理領域に出るときに減速するという現象が見られた。これらのことから、油滴の運動には、表面張力が、寄与していることが示唆された。次に、油水界面電位と油滴の運動との関係を調べた。界面活性剤水溶液に塩化ナトリウムを加えた場合と加えない場合において、界面電位と角速度のフーリエ変換スペクトルを比較したところ、定性的に同じ変化を示した。油水界面電位は、油水界面上の界面活性剤分子の濃度を反映しているので、この結果は、界面活性剤分子による表面張力の揺らぎが、油滴の運動の揺らぎに反映していると考えられる。以上のことから、油滴の運動には、界面活性剤分子に依存した表面張力の揺らぎが重要な役割をはたしているといえる。現在、油水界面に、外部から電気的信号(パルス波・サイン波)を加えたところ、信号に同期して油水界面が振動することを確認した。この油水界面の振動は、入力電圧に依存して、油水界面での界面活性剤分子の濃度が変化することによると考えられる。今後は、界面活性剤分子の化学エネルギーを効率よく力学エネルギーに変換するため、界面での活性剤分子の濃度を電気信号によってどのように制御すればよいかを調べたいと考えている。
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