研究概要 |
本研究では,電子機器等から発生する人工雑音の発生源として,家庭・オフィス等へ広く普及している電子レンジを対象とし,電子レンジから発生する人工雑音が各種無線通信システム(PDC,PHS,Wireless LAN)に及ぼす影響についての評価ならびに人工雑音存在下においても良好な受信特性を達成する受信機構成についての提案を行った. まず,人工雑音の統計的性質を明確にするため,郵政省通信総合研究所の協力の下,複数のメーカーの電子レンジを対象として,各種無線通信システムが使用する周波数帯(PDC:1.5GHz,PHS:1.9GHz,Wireless LAN:2.5GHz)で観測される人工雑音を測定し,その統計的性質について検討した.その結果,電子レンジから周期性を有する高レベルな人工雑音が発生しており,その周期はマグネトロンの発振周期(即ち電源周期)に大きく関係していることを明らかにした. 次に,測定結果を基に,電子レンジ人工雑音環境下での各種ディジタル無線通信システムの誤り率特性を計算機シミュレーションにより評価し,人工雑音の影響により従来の無線通信システムの誤り率特性は大きく劣化することを明らかにした.また,TDMA方式を用いた無線通信システムでは,TDMA方式のフレーム構成によっては,高レベルな人工雑音の発生周期とチャネル周期が同期することにより,人工雑音の影響が特定のチャネルに集中することを明らかにした. さらに,人工雑音環境下においても良好な受信特性を得るための対策法として,人工雑音の統計的性質に基づく受信機構成を提案し,その受信機を用いた場合の誤り率特性を計算機シミュレーションにより評価した.その結果,提案受信機を用いた場合の特性は従来型受信機を用いた場合の特性を大きく上回り,誤り率特性が大きく改善されることを明らかにした.
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