研究概要 |
本研究では,これまでに,軸対称物体の屈折率分布を再構成する問題(1次元問題)について,境界平均整合の手法に基づく再構成アルゴリズムを開発し,その有効性を確認してきた.本研究は萌芽的研究であり,本年度の研究実施計画は次のとおりであった. 1.2次元不均質物体内部の波動場算定に関する解析的理論の提案 2.再構成アルゴリズムの構築及び計算機シミュレーションによるアルゴリズムの有効性の確認 3.研究成果の公表 計画1については,2次元不均質物体の一例として,2媒質からなる非軸対称物体を考え,この物体に平面波を照射したときの物体内外の波動場を解析的に求めた.この際,物体内部の2つの媒質の境界形状は円,物体と外部空間の境界は任意形状とし,物体と外部空間の境界における波動場の接続については,波動場境界値問題の近似解法である安浦の方法を適用した.この結果,物体の内部構造の違いを散乱波の違いとして鋭敏に捉え得ることを示した. 計画2については,1次元問題の場合と同様に,解析的に求めた散乱波と測定散乱波を物体の境界上で平均的に整合させる手法を用い,物体の内部構造を推定する反復アルゴリズムを導出した.計算機シミュレーションに際しては,簡単のため,物体と外部空間の境界形状が円である,いわゆる非軸対称2層円柱の場合を取り扱い,推定すべき物理量は,円柱各層の屈折率,内側の層の半径及び内側の層の中心座標とした.種々のモデルに対して系統的に数値計算を実行した結果,本手法が極めて安定した手法であることが示され,本手法の有効範囲を一部明らかにすることができた.なお,本研究の成果は,計画3に示したように,いくつかの国際会議及び専門研究会において既に公表済みである. 以上のことから,所期の目的がほぼ達成されたので,今後は更に複雑な不均質物体に対して,波動場の算定法及び再構成アルゴリズムの開発等を行っていく予定である.
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